夜の避難所体験「聞こえないとは?」
「耳が聞こえない方になって夜の避難所を体験」
夜の避難所体験「聞こえないとは?」防災イベント
日時:2024年11月30日(土)16:00-18:00
会場:元気創造プラザ福祉センター
主催:三鷹ろうなん防災委員会
夜の避難所の体験をして頂き、聞こえない人と聞こえる人、どうしたら、安心して共生していけるのか、ディスカッションを通して「気づき」を得るという機会に、子どもと参加してきました。
三鷹ろうなん防災委員会の方から頂いた情報と自分のレポートを合わせて記載させていただきます。
最初、Aグループ、Bグループに分かれて、Aは体験が先、BはYoutubeが先。
私は、最初にこのYoutubeを拝見させていただきました。
▼【特集】手話と生きる 第9回「東日本大震災から11年 聞こえない人への災害対応は」動画 6分23秒) (22/03/11)
その後、耳栓と、防音ヘッドフォンを装着し、隣の部屋へ。
スマホは使わない。声をだしても通じません。
私は聞こえない人になります。
電気が消えており、ブラインドも閉めており、暗い。
そこに6つの避難所用テントがあります。
持っているのは小さな懐中電灯のみ。
テントに子どもと一緒に入ってしゃがみ込み、ここからミッションカードを手渡され、テントの窓が閉められます。
◆ミッションカード.1
避難生活3日目です。
ようやく居住スペースが決まりました。
居住スペースはパーテーションで区割りされています。
あなたは身の回りを整えてください。
電気が消えたらミッション1を始めます。 電気が点いたらミッション1を終了します。
私)・・・・・・・・(1分くらい)・・・・・
さて、よく分からないまま、電気が点きました。
もう、終わった?何かあったの?と、
一体何があったのか分からないが、テントの窓ファスナーを開けてテントの外を見ると、毛布を持って立っている人がいました。
???
なぜ毛布を持って立っているのだろう???
【この体験の内容とは】
「毛布が届きました!」というアナウンスが聞こえないため、毛布の配給を受けられなかった。という体験でした。
◆ミッションカード.2
あなたは、環境が変わったせいか、体調がすぐれません。具合が悪いことをスタッフに伝えてください。 (声は出さないでください)
電気が消えたらミッション2を始めます。電気が点いたらミッション2を終了します。
私)あちらこちらで、懐中電灯が空を照らしているのが見えました。自分もやってみたけど、誰も来ない。。。なのでテントの窓ファスナーを開けて手を振ってみました。
すると人が近づいてきてくれました。
ジェスチャーゲームのように、お腹をさする、辛い顔をする、熱があるように手をオデコにあてる、いろいろやりましたが、「眠れない?」というようなジェスチャー返しをされて、、、違う!違う!具合が悪いの~!という強い思いで。念力を送るとか?やってみたことないけどやってみるか?など頭をよぎり、何をやっても伝わらない絶望感・・・。そしてせっかく来てくれたスタッフは、どこかに行ってしまいました。。。
子どもと、どうしよう?と、一緒に悩み、困り、泣きそうになりました。
そんなこんなで、電気が点きました。
【この体験の内容とは】
体調不良をスタッフに伝えたいが、うまく伝わらない。スタッフは忙しいので、他の用事で呼ばれて行ってしまう。ということでした。
◆ミッションカード.3
夜中、あなたはお腹がすいてきました。
パーテーションの中で、配られたおにぎりを食べることにしました。ビニール袋に入っている、おにぎりのパックを開けて、食べるふりをしてください。
電気が消えたらミッション3を始めます。電気が点いたらミッション3を終了します
私)さ!食べよう!とビニール袋から、プラスチックのお弁当入れから輪ゴムを外し、おにぎりを出して、、、と食べるふりをしている時に、何か外で声がするような気が・・・。
でも何を言ってるのか分からない・・・。
そして、ドンドンという音?振動?がして、、、自分がいるテントがユサユサ揺れてて、、、。
???
なんだ?
なんだ??
電気が点きました。
【この体験の内容とは】
夜中にビニール袋やプラスチックのガチャガチャという音を出して、周りの人の迷惑になっていることがわからない。隣のパーテーションの方から小声で静かにするように注意されるが聞こえない。最後にはパーテーションを揺すって怒られる。
ということで、私、怒られていたんですね。。。
懐かしい1999年のホラー映画「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」の一番怖かったシーンを実体験をしたような感覚でした。
自分が出してる音が聞こえないために、怒られてる。
せっかく毛布の案内があったのに、気づけない。
具合いが悪いことが伝わらない。
本当に身にしみて分かりました。
こんなにも自分の耳に依存しながら生きていたのかと。
そして、なぜ、こちらが聞こえない人だと分かってもらえないんだ!?とか、バリアフリーではない、聞こえない方の立場になることを子どもと一緒に体験できたことは大変有難く思いました。
と同時に、こんな避難所じゃダメじゃないか!という思いも溢れてきました。
■そのほか、読話という、声を出さない口の動きだけで読み取る体験をしましたが、分かる言葉と分からない言葉がありました。難しい。
災害時に口で話すことについて(読話)は、難しい。
紙とペンはつよい! (暗闇では弱い・・)
■体験した方からの声として、
・(スタッフがつけていた「手話ができます」)バンダナがあることで手話ができることが分かり、安心できた
・孤独な気持ちになった
・なぜ、テントが揺らされているのかわからなかった
・体調不良が伝わらないことのつらさ、苦しさを疑似体験できた
・1人で避難できないくらい、本当に怖い体験でした
・コミュニケーション不足→ストレス
・音を立てることには、昼間と夜とでは周囲の反応に違いがあることがわかった
■災害時使えるアイテム!
●遠隔手話通訳というものがあり、これの方が災害時に使えるそうです。
(参考:世田谷区が2024年4月遠隔手話通訳提供開始)
●岡山大学の先生がスマートウォッチのアプリで災害緊急時の知らせをするものを開発中。
外出時に消防車や救急車が近づいたときも、音を感知したスマートウォッチが振動してそのメッセージが出る。この命を守るアプリは、2025年1月の実用化を目指している。しかし、スマートウォッチは値段が高いのでこれに聴覚障害者の日常生活用品を対象にしてほしいという思いがあるそうです。
1950年、岡山の盲学校とろう学校の寄宿舎が火事で全焼しました。盲学校の子供たちは全員無事だったものの、音が聞こえないろう学校の子供たち16人は亡くなられてしまいました。
岡山大学病院聴覚支援センター 片岡祐子准教授は、「状況が今も変わっていなくて、災害の時に困っている人が多くいるという事実があるから、何か次の一手を担っていけたら」。
片岡さんに協力するのは、音の情報を振動に変換する機器を手掛ける大手電機メーカー富士通の開発者。アプリの技術者など、それぞれが連携し、試作を重ねてき、2024年、岩手県と岡山県で聴覚障害者を対象に実証実験も行われ、アプリはまもなく実用化できる見通しとのこと。
▲参照 OHK 岡山放送 岡山発!災害時から聴覚障害者の「命を守るアプリ」実用化へ…安心できる暮らしを目指す“アイデア”集まる:
https://www.ohk.co.jp/data/26-20241109-00000001/pages/
この詳細はこの↓ニュース動画へ↓
▲【手話が語る福祉 岡山】
音が聞こえないことで迫る“災害の危険”から聴覚障害者を守るための取り組み
(動画 3分54秒) (24/07/20 18:00)
■みんなに知っててほしい!ハウリング音について
【補聴器のハウリングについて】
補聴器から「ピーピー」という異音が聞こえる現象は「ハウリング」と呼ばれ、周囲の人に聞こえてしまうことがあります。補聴器をしている本人は音が出ていることはわかっていません。気付いた場合は音が出ていることを教えて欲しいそうです。実際に、補聴器同士をくっ付けるとハウリングしていました。
▲補聴器からピーピー音がするのはナニ?その対処法は?
■三鷹市の改善点
・市内の聴覚障がい者の人数や手話通訳者の人数は、はっきりわからない。
地域のろう者と通訳者はみんな連絡が取り合える状態になっていない。
会に入っているメンバーは連絡先が分かるが、市が公開していないため、人数も分からないし、入っていないメンバーの連絡先も分からない。
・参加者から:災害があった際は、通話通訳者が一度市役所等に集まり、それからどの地域に派遣される等体制を整えるのはどうか?等の提案がありました。
★ろう者の立場から
聴覚障害を持つ人には、聞こえる社会で生じる音声情報が「文字」として入ってこない、「合図」などが伝わってこないため、受け取る時間と情報量に差が生じてしまうことをいう。
災害時、聴覚障がい者 は 情報弱者 に陥りやすい漫画ですが、聞こえない人が避難所にいる辛さの様子がよく分かります。
聴覚障害者の災害時に困ることって?パラパラ漫画 (動画:9分33秒)
▼ 動画を一部紹介
災害関連死を含めた死亡率が 2 倍
▲ 原因「 情報 格差からくる 情報弱者 」これを防ぐには?
ろう者の生活行動が異なるため (目で暮らす)、一般の避難所は、使いづらい。
でも、福祉避難所へ行きたいとまでは…、思っていない。
聞こえない以外、何でもできるので (活動参加できる)
手話言語、音や光など、生活行動が異なるため、一般の避難所のところで、聴覚障害者コーナー、(外国人コーナー)を分けることができるとありがたいとのこと。
▼聴覚障害者に関する貴重な情報リスト▼
●東日本大震災で被災した聴覚障害者における問題状況
― 情報アクセスの視点から― (松崎丈 著者・2013)
https://mue.repo.nii.ac.jp/records/734
●聴覚障害者災害時初動・安否マニュアル
(財団法人 全日本ろうあ連盟)
https://www.jfd.or.jp/info/2010/teq/p018/1-shodou-anpi-manual.pdf 聴覚障害者自身は平常時よりどのような準備をしたらよいか、繋がりをつくるには?などの情報が掲載されています。
●難聴者・中途失聴者のための災害時・緊急時対応マニュアル
聴覚障害者専用の福祉避難所を確認しようの情報もあり
https://www.zennancho.or.jp/wp-content/uploads/2017/07/20171101saigai-manual.pdf
●聴覚障害に関する相談窓口・支援団体(NHK)
https://www.nhk.or.jp/heart-net/topics/2/
●緊急時の通報「110番アプリシステム」&「Net119緊急通報システム」、電話リレーサービス、「自分の聞こえを相手に伝えるためのサポートツール」の紹介、ろう協など…生活を支援する制度やサービスなどが掲載されています。
●聴覚障害者災害時支援パンフレット
http://www.mimisuppo-miyagi.org/bousaiinfo.html
東日本大震災に見舞われた経験を教訓にし、大変有益な情報を提供しています。
緊急・災害用お願いカード
▶PDF版
折り畳み可能で、財布等に入れて持ち歩くことができます。
http://www.mimisuppo-miyagi.org/data/%E2%98%85onegaicard-A4.pdf
▶スマホ版
画面で見せる方法です。
http://www.mimisuppo-miyagi.org/data/onegaicard-sumaho.pdf
●災害用バンダナ(ヘルプバンダナ)
種類があります。キーワードで画像検索してみてください。
●災害時の聴覚障害者用指さし会話シート
(宮城県聴覚障害者情報センター)
https://www.kahoku.co.jp/special/bousai/pdf/musubi_sheet.pdf
●災害時のコミュニケーション指さしボート
(大分県聴覚障害者センター)
https://www.toyonokuni.jp/wp-content/uploads/%E7%81%BD%E5%AE%B3%E7%B7%A8.pdf
●災害用伝言サービス
文字での災害用伝言板の利用方法 をご参照ください。
https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/net_anzen/hijyo/dengon.html
●Yahoo Japan 防災速報アプリ
https://emg.yahoo.co.jp
スマホで地震・津波・豪雨などのあらゆる防災情報を迅速にプッシュ通知で知らせてもらえます。
●緊急時に役立つLINEの使い方
https://guide.line.me/ja/features-and-columns/emergency-tips.html
インターネットにつながっていれば、災害などの緊急時に“ホットライン”として活用できます。
■三鷹ろうなん防災委員会の立場からのお話
三鷹市聴覚障がい者協会、三鷹市登録手話通訳者会、手話サークル鷹の会とそれぞれ立場が違うメンバーで構成されている。
三鷹市内の聞こえない人の数は正確には分かりませんが、三鷹市と通訳者が普段から連携する体制を整備してほしい。
ろう難聴者は昼間の総合防災訓練に通訳付で参加しているからなんとなく昼間の様子はわかるが、夜の避難所では、手話通訳者が居るかどうかもわからない。暗いと手話や文字も見えないのでコミュニケーションもとりづらく、避難所に居づらくなってしまうのではないかと思っている。
発災時にはどんなに準備していても、訓練以上のことはできない。それでも前もって情報が共有できれば、いざという時に減災や共助もできるのではないか。
今後の目標として、災害が起きた時の三鷹市聴覚障害がい者協会を中心とした体制づくりや防災パンフレット作りがある。 それに向けてこれから話し合う予定だが、避難所に関しては市民の方々や運営される住協の方々、近隣の方々の理解も必要になってくるので、みなさんのご協力をよろしくお願いいたします。とのことでした。
私、石井れいこもこのバリアをなくすことが必要だと感じます。引き続き三鷹市に問い合わせていきたいと思います。
【三鷹ろうなん防災運営委員会の所感と減災活動】
~三鷹ろうなん防災運営委員会の方より~
災害の「自然災害(天災)」で亡くなるのは、自然現象が原因なので人間の力ではどうしようもありませんが、災害による「人的災害(人災)」で亡くなることについてはどうでしょうか。
「人災」とは、連携不足や情報格差など人為的原因で起こったもので、これらを防ぐ方法があったはずです。人災で亡くなった方々のことを思うと無念でなりません。
防げたはずの「人災」を減らす「減災活動」を、出来るところから始めなければいけないと思っています。近隣付き合い、団体と団体の連携、定期的な情報共有や当事者の意見交換などを行い、 不安要素を減らしていきたいと思っています。
参照:
「三鷹ろうなん防災委員会」活動とは?
↓ 紹介資料ダウンロード(6ページ) ↓
https://drive.google.com/file/d/1-tDqSwh1DLZl_8Aaf2XQX5CN7Chn8yib/view
三鷹聴覚障がい者協会
SNS/連絡先
https://lit.link/mitaka181deaf
2024年12月発行 / 石井れいこ & PEACE SCRUM